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  • 2015.08.22 Saturday
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[レビュー]監獄ロック

エルヴィス生誕71周年の今週は、この梁山泊はElvis Weekですが、BS2も同じ事を考えているようで、ここ数日間エルヴィスの映画をやっている。昨日は1957年のエルヴィス3本目の主演映画「監獄ロック/Jailhouse Rock」でした。この映画は、日本では遅れる事5年、1962年に公開された・・・なんてエピソードはさて置き、久しぶりにコレを見てTHE GOLDEN AGE OF ROCK AND ROLL的考察を思いついたので、書いてみようかな、と。
この映画ストーリーは至って明快、過失で人を殺してしまった青年(エルヴィス)が出所後歌手として、挫折を味わいながらも成功していく・・というもの。

個人的には、劇中でのスタジオレコーディングやクラブのシーンでエルヴィスのバックを演奏している役者が当時実際にエルヴィスのバックをつけてたギターのスコッティムーアやベースのビルブラック、ドラムのDJフォンタナ・・だったりして俳優が本業で無い彼等が、中途半端な演技をしているのが微笑ましいとか、ギターのスコッティムーアが当時メインで使っていたL5のアルニコピックアップ付きを劇中で使用しているが、ホントは丁度この「監獄ロック」の頃に彼はメインギターをギブソンの最高機種であるスーパー400に変えていて実際のレコーディングではそっちを使ってるはずだとか、クラブのシーンでエルヴィスが歌う前に演奏されている軽いバックグランドミュージックのジャズブルースは状況から考えて、多分エルヴィスのバンドの演奏だろう、その音源はレコード化されてないな・・とか、そのバックミュージシャン達がかもし出す雰囲気が、いかにも昔堅気の、「粋な」感じのする、一晩でトランク一杯のギャラを稼ぐけど全部飲み代に消えて宵越しの金は持たないような古き良き小粋なジャズメンの雰囲気(タバコの吸い方とか)を引きずってるな・・・等など、変態っぽい楽しみ方ばかりしていたのだが、それはさて置き劇中、ロックヒストリー的に非常に興味深いエピソードに出会った。

その部分は、歌手を志すエルヴィスが、既に人気のある“ミッキー アルバ”という架空のアーティスト担当の女性マネージャーと出会い、彼女のコネを使いデモレコード“Don't Leave Me Now"を大手レコード会社に売り込むのだが、色よい返事が貰えず一旦はあきらめる。この女性マネージャーは、密かにエルヴィスに好意を抱いており、仕事抜きでエルヴィスに協力をするようになるのだが、しばらくすると"Don't Leave Me Now"が、なんと“ミッキー アルバ”の歌う歌でヒットし始めるのだ。業界に疎いエルヴィスは初め何のことかわからないが、“業界のやり方”を知っているマネージャーはすぐに状況を把握、自分たちのデモが利用された事に気付く・・・というもの。

そこで“ミッキー アルバ”バージョンの"Don't Leave Me Now"がかかるんだが、それがいかにも「白人中産階級向け」バージョンなのだ。甘い声色に少しタメたような歌い方・・・これはロックンロール登場前のティンパンアレイポップの特色だ。以前THE GOLDEN AGE OF ROCK AND ROLL CD紹介その22でパットブーンについて書いたが、この辺の事情をわかった上で「監獄ロック」のこのエピソードを見るとかなり興味深い。

多分このシーンは特にアメリカの文化についての知識が無く見れば、「デビュー前の新人歌手のアイデアをキャリアのあるアーティストがパクッた」というエピソードにしか写らないだろうが、50年代という時代背景を考えるとそういう単純な話ではすまない。ロックンロール、人種問題、ワスプ優勢の文化・・・等様々なキーワードが浮かび上がってくる。

エルヴィスは白人だが、極めてブラックフィールの強い歌い方をする。劇中でデモを録音する時初めイマイチ上手くいかないが、マネージャーと「もっと自分流に歌ってみたら」みたいなやり取りをして、最高のデモができる・・・みたいなシーンがあるが、これは「自分流=より革新的なもの=ブラックフィール」と置き換えることができないだろうか?余談だが、このシーンは、サンレコードでの「ザッツオールライト」誕生の話を髣髴とさせる。

更に発展して「エルヴィス=50年代の黒人を含む主にインディーレーベルの本物のロックンローラー達の象徴=クリエイティブで斬新だが企業戦略が未熟で大資本に利用されやすい人達」「ミッキーアルバ=パットブーン=旧態然とした守りに入った卑怯な企業家連中」・・・という風に置き換えられなくも無い。

勿論こんな置き換えは単なる俺の妄想に過ぎないかもしれないし、実際のエルヴィスは大企業RCA に所属するドル箱アーティストで映画もハリウッドのビッグな映画だったわけだが、本人も含め周りのブレーンは、大企業の立場に立ちつつも、インディー的雑草精神を忘れずに物事を発信していたのではないだろうか?

表ざたにこそなっていないが、上記のエピソードのような話は多分腐るほどあっただろうし、少し種類こそ違えど、50年代当時インディーレーベルから出ていたような、チャックベリーやリトルリチャードが曲を出すと、すぐさま白人歌手たちのカバーが発売され、ラジオでよくかかるのは白人アーティストの方だったのだ。こういう事には非常に憤慨した、と後年リトルリチャードが語っているが、未だに政治家等に有色人種が少ないアメリカらしいエピソードだ。

「監獄ロック」はそんな社会とそれに同調した音楽業界を内部からイヤというほど目の当たりにし、パーティとリムジンに象徴される狂乱の大資本レコード会社やハリウッド社交界の片隅に身を置きつつも反骨精神を忘れなかった製作者連中のささやかな主張が込められているのかもしれない。
監獄ロック
監獄ロック
  • スタジオ: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2003/06/20
  • 売上ランキング: 28,871
  • おすすめ度 3


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  • 2015.08.22 Saturday
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  • 19:20
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